「大きくなったらパン屋さんになりたい」子どものころ、そんな夢をもったことのある方も多いのではないでしょうか。生地の仕込みや焼きに時間がかかるパン製造業は勤務時間が長い印象がありますが、どのくらい儲かるものなのでしょうか。また、成功しているパン屋さんとそうでないパン屋さんにはどんな違いがあるのか紹介しましょう。

パン製造業の平均年収は350万円。1日の拘束時間は10時間?

ここでは個人経営のパン屋さんを例にあげて紹介していきます。パン屋さんの年収は平均して350万円程度。月収にすると29万円程度となり手取りは26万円前後となります。アルバイトなどの従業員を雇う場合、さらに収入が減る場合も。そのため、個人経営のパン屋さんは家族経営で行っているところが多いようです。

また、パン屋さんは勤務時間が長いのが特徴。ほとんどのパン屋さんが遅くとも朝5:00には仕事を始めています。パン屋さんの開店時間は8:00~9:00と早いところが多いのです。

まず、食パンやバゲットなどのプレーンなパンを焼きあげます。焼きたてを1日に何回か出したい場合、2~3時間おきに生地を仕込むパン屋さんも。その間にもクリームや総菜パンのトッピングを準備したり、適宜掃除(これがかなり厳しい)したりといったが入り、休憩時間も短め。食事もランチタイムとはずらして、合間にとるイメージです。

夕方になると、翌日のパン生地の仕込みや総菜パンのための準備を始めます。最後にもう一度、徹底的な掃除をします。勤務時間は8~9時間。休憩時間を入れると10時間程度になることがほとんどです。

売上が出ても利益がでず閉店するケースも

パン製造業は開業資金がかかるのが特徴です。業務用のオーブンなどの厨房設備やパン作りに必要な型などだけで420万円程度、賃貸物件を借りるのにかかる費用(10坪程度で約90万円)、女性客に受け入れられそうな内装工事の費用に200~300万円程度と開店するだけで600~700万円以上の費用がかかります。パン作りの学校に通ったり、研修を受けたりする場合はさらに数十万円程度の費用が必要となるのです。

味にこだわったパンを販売すれば、売上にはなりますが、開業資金の返金もあり、利益があがらず閉店を余儀なくされるケースも。

体力的にきつい仕事

業界では「パン屋の仕事は体力勝負」と言われています。早朝からの仕事、毎日20キロ以上ある小麦粉を運ばなければならないこと、立ち仕事であること、連休がほとんどないことなどを考えると、若いうちはなんとか頑張れても、年齢を重ねるにつれ厳しくなっていく……ということもあります。また、パン作りには発酵が必要なため、常に30度くらいの室温の場所で働かなければなりません。ヘルニアや湿疹はパン屋さんの職業病とも。

食パンやロールパンだけで売れ続けているパン屋も

個人経営のパン屋さんは休日も新しいパンのアイデアを考えているそう。多品種少量を売るスタイルのお店がほとんどですが、なかには食パンやロールパンといったプレーンなパンだけを売る戦略で成功しているところがあります。

こうしたお店のこだわりは「おいしい小麦粉とおいしい水」。最近、都心を中心に増えている食パン専門店の「一本堂」では、同じ食パンでも、ふわっと焼きあがる海外産の小麦粉の他、日本人好みのもっちりとした食感に焼きあがる国産小麦粉を使い分けたり、生地にコーンや干しブドウなどを混ぜ込んで焼き上げたりと、バリエーションをつけています。

また、食パンとロールパンだけを作り続けている浅草の「ペリカン」ではプレーンな味のものだけを毎日、ひたむきに作り続けているお店。ペリカンでは個人の固定客の他に、喫茶店やレストランなどへの卸売りも多く、予約だけで売り切れることもあるのだとか。

こうしたお店は品種が少ない分、以下のようなメリットが見込めます。

  • 作り方を覚えるのが簡単(ただし、天気や湿度が変わるなか同じ品質を保つのは経験が必要)
  • 総菜の仕込みやクリームなどパン以外の調理が少ないため作業数も減る
  • 朝作った分だけ売り切ったら終わりというスタイルも可能
  • 品種が少ないため、周りのお店と競争が起こらず、長続きしやすい

その分、パンの味、質にはこだわる必要がありますが仕事の内容としては多品種少量を売るパン屋さんよ
りも負担が軽く、顧客の満足度も高くなると言えます。

好きな仕事で生計を立てるために

パン業界は残念ながら、離職率の高い仕事。個人経営であるパン製造業に携わる人に話を聞くと「つらくても耐えられるか」「本当にパンに一生を捧げる気があるか」を問われる仕事だと話してくれました。

きつい仕事だけに、パンが好きだから!というだけの考えでは失敗する可能性が高いでしょう。パン製造業で利益をあげ、自分自身が幸せな働き方をするにはビジネス的な思考やセンスも必須。パン教室に通って講師の方に話を聞いてみたり、パン経営のセミナーなどに出席してみたりして経営のノウハウを学ぶできでしょう。

Top Image @Shanghai Young Bakers